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ロマンチストは止まれない!

「雪道。これはいったいどういうことなのか、詳しく説明してくれないか」
 天気のいい週末の午後。同居を始めた雪道が、自宅からマンションに持ってきた荷物を整理していると、手伝ってくれていた仙光寺がふいに厳しい声で言う。
「どういうことって、なにがだよ?」
 座って段ボール箱を開いていた雪道は、怒った口調に驚いて立ちあがる。仙光寺は険しい顔で、手にしていたものを雪道につきつけた。
「これだ。なぜペアルックをしている」
 それはかつての職場で、八重垣と一緒に撮った写真だった。事務所で暇潰しに撮っただけだが、写りがよかったからと、プリントアウトして八重垣が送ってきてくれたのだ。が、もちろんペアルックなどしているはずがない。
「……お前なあ。単に制服ってだけだろうが」
「そう言われればそうも見えるが、他の店員の写真も見ないと証明にはならないな」
「学生の仲良しグループじゃあるまいし、他のスタッフの写真まで撮ってねぇよ」
 雪道の弁明に、あやしい、と仙光寺は眉間に皺を寄せる。雪道は軽く睨んでみせた。
「なんだよ、不貞腐れた顔して。お前、俺の言うことが信用できないってのか?」
「……いや。そうだな、確かにお前の言葉を疑ったのは悪かった。だが、心穏やかでいられない俺の気持ちもわかってくれ」
 真面目な顔と声で謝られると、むやみに怒ることもできなくなって、雪道は困惑してしまう。
「心配しすぎなんだよ、慶は。俺は別にモテもしねぇし、お、お前以外にそんな、男相手に好きだの嫌いだの、考えたことさえねぇのに」
 嫉妬されることに不慣れな雪道が照れながら言うと、仙光寺の表情から険しさが消える。
「かもしれない。自分でも、お前のこととなると極端なものの考え方になってしまうと自覚している。……これもお前を想う心が強すぎるせいだと思って、大目にみてくれ」
 頬が熱くなるのを感じながら、ああ、と雪道がうなずくと、仙光寺は白い歯を見せた。
「わかってくれたか。では早速、スーツをオーダーしよう。俺とペアルックをするぞ、雪道」
「なんでそうなるんだよ!」
 反射的に突っ込みを入れたものの、仙光寺は一度決めたことは絶対に変えない。
 雪道は小さく溜め息をついて、ペアルックの覚悟を決めたのだった。
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