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一人上手は駆け引きが下手

「なんか、好きなの一個買ってやる」
 カレシに連れてこられたアダルトショップで、いきなりこう言われたらどうふるまうのが正解だろうか。
 桜岡歩は固まった。刑事である前田といい仲になって初めての、アダルトショップデートだ。
 おそらく先週に給料が入ったらしく、ちょっといいお店で夕食をおごられた後だ。この後は歩の部屋で、買ったものも使ってきっとあれこれされるはずだ。
 ――大人ってエロい。
 そう考えるが、期待に歩の全身は火照ってくる。もともと一人でアダルトグッズを使うのが大好きな歩だ。だが、それを使って前田にあれこれされると、とてつもなく身体が熱くなることを知った。そんな歩に、自ら自分を責めさせる道具を選ばせるなんて、前田はまったくたいしたどSだ。
 ――そういうところが、好きなんだけど。
 だが、任されたからには選ばなければならない。弁護士を目指して司法試験受験対策真っ最中の歩は、ショーケースに眼鏡を向ける。
 刑事の収入は安定してはいるだろうが、この場合に使って良い価格は一万円は超えないはずだ。かといって、安すぎるのはメンツを潰す。
 だが、その値段で選べるものは無数にあった。
 ――今、不足しているものといえば、……ローターにつける、シリコンサックか……。
 当て馬的な存在の男にあれこれされたおかげで、歩は余計な知恵をつけてしまった。
 ――だけど、あれは一個、数百円……。
 必死になって考えを巡らす歩の前で、さっと前田は商品を手に取った。可愛いピンクのフェイクファーで覆われた手かせだ。
「可愛いから、これにしような」
 あっさり言われる。もっと機能性と丈夫さを考慮した上で、価格に見合ったものを選びたい。それが、アダルトグッズ愛好家としてやってきた歩の矜持だ。
 ――だけど、……可愛い?
 自分は前田にとって可愛い区分なのだろうか。
 それをつけた自分の姿を想像してみただけで、似合わないよという思いと、愛されたいという欲望に全身が熱くなる。前田の希望に、今の自分が逆らえるはずがない。
「いいよ」
 どんなたわいないものでも、前田と使うとすごくなる。これが恋の効力なのかもしれない。
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