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復讐の枷~それでもお前を愛してる~ 

「37.4度……昨日よりは下がったが」
 体温計から、ベッドに横たわる臨へと視線を移し、アーサーは眉間に皺を寄せた。
 臨がかすれた声で呟く。
「放っておいていいのに……ただの風邪だし、僕に看病してもらう資格なんて、ないんだから」
 熱のせいで潤んだ瞳と赤らんだ頬が艶めかしい。アーサーは一昨日の夜を思い出した。
 ベッドで臨を責めたあと、汗を流すためバスルームへ入ったはずだった。けれど壁に向かって立たせた臨の後孔へ指を入れ、精液を掻き出している時、
『やぁ……そこ、押さないでっ……あっ、ぁああ!』
 臨があまりに甘い声をこぼすものだから、また欲情してしまった。
 シャワーで濡れて艶を増した黒い髪や、肩甲骨が浮き上がった、肉の薄い背中のライン。中で動く指に感じてびくびくと跳ねる腰――もっと喘がせたい、味わいたいという欲望を抑えきれず、指を抜いて牡をねじ込んだ。
 事後、疲れ果てて充分に体を拭かず、髪も乾かさないまま、寝室へ移って眠った。
 その結果、自分は平気だったが臨が風邪を引いた。
 熱い額に手を当て、言ってみた。
「看病くらい当然だ。……お前を愛しているんだ」
 臨が大きく目を見開く。その瞳の奥にある感情を読み取り、アーサーは口調を嘲笑混じりに変えた。
「……と、言うとでも思ったか? 嘘に決まっているだろう。許したりするものか」
「あ……」
「お前を痛めつけて復讐するのは、俺の権利だ。風邪のウィルスごときにやらせる気はない。だからさっさと治して、健康体に戻せ」
 納得か、あるいは安堵か、臨は小さく微笑んでから目を閉じた。眠くなったのかもしれない。
 病んで、かえって美しくさえ見える寝顔を眺め、アーサーは思った。自分の本心を伝え、臨がそれを受け入れてくれるのは、いつのことだろう。
(待つしかない。……待てるさ、いつまでだろうと)
 臨が完全に眠っているのを確かめ、アーサーはそっとその唇にキスをした。
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