会員限定コンテンツ

極上・快楽カウンセリング

 積み上げられた本の山の中にいると、森の中にいるような錯覚に陥る。
 古見仲は響希と寄り添いながら、彼の部屋で床に腰を下ろして本を読んでいた。響希に勧められた本は海外翻訳の冒険譚で、最初は子供っぽいと思っていたが読み進めていくとなかなか面白い。
「もう俺の趣味を把握してるって?」と小さく笑いながら言ったら、「カウンセラーの先生には負けるけど」と笑い返された。
「まあね。俺は響希のことなら大概はわかるからね。俺にいろんな本を薦めたかったんだろ?」
 笑顔で頷く響希が可愛い。これでスーツを着たら澄まし顔の教師になるのだから、世の中は不思議だ。
「そう。その本は絶対に先生は好きだと思ったんだ。文体もそうだし、アウトドア描写がいい。作者は自然が好きな人なんだ」
「そうか、ありかぜとう。ところで、そんなに本が好きなら司書になれば良かったのに。一日中本に囲まれて幸せだろう?」
「資格は持ってる。でも俺は教師になりたかったんだ。本は趣味として極めたい」
「なるほど。俺は趣味と実益が一緒になった感じ。楽しいよカウンセラー」
 古見仲はそう言って本を閉じ、響希を引き寄せて背後から抱きしめる。響希は体を預けてくれたが、照れくさいのか俯いた。
「弟たちが、帰ってきたらどうするんだよ」
「幸希君なら夜まで帰ってこないよ。彼女の家でご飯を食べてくるって」
「なんで俺に言わずに先生に言うんだよ」
「俺を響希の恋人として認めてくれたってことじゃない? たぶん」
 響希の右肩に顎を乗せて「ふふ」と笑うと、「くすぐったいよ」と拗ねた声を出す。
「学校の先生が生徒みたいな拗ね方をしないの。そういうところも可愛いけど」
 抱きしめていた両手を動かして服の上から脇腹や胸を撫で回したら、すぐに「先生」と甘い声を漏らした。本当に可愛い。
「ちゃんと勃起できてるかな?」と言って右手で股間を撫でたら、「見たらわかる」と少々雑な誘いを受けた。でもこれは響希の照れなので気にしない。
 響希が自分で服を脱ぎながら「本は、絶対に汚さないでくれ」と言ったので「当たり前だ」と頷いてキスをした。さてここから、つかの間、先生とクライアントの内緒の時間を過ごそう。
 
  
一覧へ戻る

Search

キーワード

カテゴリ

  • 作品へのご意見・ご感想
  • 原稿募集