小説

腹黒天使はネコ耳王子と恋に落ちるか

著者
小中大豆
イラスト
すがはら竜
発売日
2018年1月20日
価格
680円(税抜)
スパダリ天使がポンコツ悪魔を可愛がりすぎます!?

猫系悪魔王子・流可の人間界での修行は、天使を堕天させること。成功すれば念願の魔王になれるのだ。どうせならハイスペックを自認するいけ好かない天使の亜門を篭絡してやろうと、ほくそ笑みながら交際を申し込んだところ、すんなりとOKをもらえた。嫌われていると思っていたのに。だが、亜門は恋人になった途端、絵に描いたようなスパダリに豹変。可愛がられ、甘やかされ、奥手な流可は課題をクリアする前に亜門に惚れてしまいそうで!?

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登場人物紹介

流可(るか)

魔界の王女の第一子。猫系悪魔の血を引くが、執事のキジトラに養われるほどのポンコツぶり。

亜門(あもん)

天界のエリートで、多くの人間を更生させてきた。一発逆転をかけて近づいた流可をなぜか溺愛する。

試し読み

『悪魔の囁き』という言葉があるように、人を堕落へ促す誘惑は、甘美で抗いがたいものであるはずだ。──本来は。
「いい加減にしてよ!」
 耳元で大声を出され、耳がキィンと痛くなった。しかし流可が思わず耳を押さえると、目の前の女性はますます目を吊り上げて怒りを強くする。
「バイト休めって、いつもいつも簡単に言うけどさ。じゃあ何? 私がクビになったら養ってくれるの? あんたが金出してくれるわけ? 結婚してくれんの?」
 いきなりまくしたてられて、流可はオロオロした。
「え、けっ、結婚? いやあの……ただ美利ちゃんがいつも、バイト行きたくないなあって言うから……」
 休んじゃえば、と言ったのだ。この美利というフリーターの女の子は、バイトを遅刻したりサボったりすることがよくあるので、流可にはなかなか美味しいターゲットだった。
 今日もサボってくれないかな、と期待していつも通り声をかけたのに、急に怒り出してしまった。女性というのはよくわからない。
「そんなの、ただの愚痴に決まってんでしょ。誰だって働きたくないんだよ。あんたみたいなニートとは違うの!」
 場所は客で混み合うコーヒーショップで、大声で「ニート」と叫ばれるのはすごく恥ずかしい。
「お、俺、ニートじゃない」
 ちゃんと立派に働いてる。どんな仕事かと聞かれたら、答えることはできないけど。プライドを刺激され、小さい声でボソボソ言い返していたら、「何ブツブツ言ってんの!」と、また怒鳴られた。
「そもそもあんた、あたしのことどう思ってるわけ? 付き合って一か月になるのにエッチはおろかキスもしないって、どういうこと?」
「え、えっ? いや、エッ……なんて大声で言うの、良くないと思う、よ?」
 周囲の人がみんな見ている。恥ずかしい。すごく恥ずかしい。それにどうしてこんなに彼女が怒っているのかわからない。どうすればいいんだろう。
「あーっ、もう! イライラする! ほんとあんたってサイテー。グズだし優柔不断だし、気が利かないし。ほんと顔だけだね。もう連絡してこないで」
 じゃあ、と席を立ち、美利は去っていく。勢いに圧されて呆然としていた流可は、慌てて席を立って追いかけようとした。
 だが腰を浮かしたその時、耳のピアスから、ポーン、と無機質なアラームが響いた。
 ──ナンバー××××〇九三を消失しました。登録を解除します。
 ──中途解除に伴うペナルティは、マイナス三万ポイントです。『流可』さんの、今月のポイントは、合計三万八千百一ポイントです。
 同じく無機質な男性の声が、ピアスから発せられる。周りの人間には聞こえないこの声に、流可は青ざめた。
「マイナス三万……?」
 もうすぐ月末。給料日だ。流可が従事している仕事では、ポイントに応じて給与が支払われる。完全歩合制なのである。
 給与は、流可が現在居住している日本という国の通貨で支払われる。一ポイントにつき一円。三万八千百一円が現在の給与額というわけだ。
(今月も赤字だ)
 三万八千円なんて、使用人の給料にもならない。家に帰ったら、また執事に小言を言われるだろう。想像して、胃がきゅうっと痛くなった。

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