小説

色悪幽霊、○○がありません!

著者
中原一也
イラスト
小山田あみ
発売日
2017年9月20日
価格
680円(税抜)
男の大事なもん取り戻さずに成仏できるか!

先祖代々の屋敷を相続したら、性欲漲る昭和の不良オヤジの幽霊に取り憑かれてしまった――! そんな荒唐無稽な災難に見舞われた、売れない小説家の安田。きっかけは祖母の家にいた土方という幽霊に、なくしたモノを探して欲しいと頼まれたことだった。だが、日に日にパワーを増し、実体化さえるすようになった土方が安田にお願いしたコトは!? 「チ○コもないくせにセックスできるわけないでしょう!」 世話の焼ける幽霊に翻弄される、安田の受難の日々が始まった。

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登場人物紹介

安田一生(やすだいっせい)

売れない小説家の27歳。亡き祖母の屋敷を相続するが、地縛霊となった土方のあるものの捜索を手伝うはめになる。

土方雄之助(ひじかたゆうのすけ)

安田の先祖・初と通じていた男。嫉妬した初の旦那に殺された際大事なものをなくし、それが心残りで地縛霊になった。

試し読み

 幽霊屋敷。
 目の前の古びた屋敷を前にした安田一生は、いかにもという佇ずまいに、なるほどそう言われるのも納得だとしみじみ感じていた。近所の小学生の間で幽霊屋敷と噂されるこの屋敷は、安田の両親が相続したものだ。敷地は広く、立派な日本家屋だが、いかんせんかなり年季が入っている。
 敷地を囲む白壁にはところどころ小さなヒビが入っており、門扉の板も塗装が?げてしまっている。もともと手が回らずあちこちガタがきていたが、この半年でさらに傷みが進んだらしい。幽霊どころか妖怪の類まで棲みついていそうな雰囲気を醸し出している。
「ここがお前のおばあちゃんの家?」
「うん。古いだろ? 子供の頃はトイレに行くのが怖かったな」
「確かに子供はそうだろうな。でも立派な御屋敷だよ。地主さんだったんだって? お前、お坊ちゃんだったんだな」
 幼馴染みの尾形にそう言われ、苦笑いする。
 尾形家は代々除霊師をしており、尾形も家を継ぐために修行をしている。お坊ちゃんと言われるにふさわしいのは尾形のほうだ。そちらの世界ではかなり有名な家柄らしく、そのぶんプレッシャーも大きいと随分前に酒の席で愚痴を零されたことがある。
「お前にお坊ちゃんって言われると違和感があるよ。でもごめんな。せっかくの休みなのに手伝いに来てもらって」
「いいって。幽霊屋敷には興味あったし。だけど特に何も感じないな。悪霊なんかがいるとすぐにわかるんだけどな」
 一緒に来てもらった理由の一つが除霊師の尾形に屋敷の様子を見てもらうというものだが、それは単なる口実で実際は掃除の手伝いというのが主な目的だ。半年前までここに住んでいた祖母は幽霊の類いなど見たことはなく、両親からもそんな話は聞いたことがない。
 昔からよくしてくれる友達で、屋敷に泊まりで大掃除に行くと聞いただけで一人で大丈夫かと心配してついてきてくれた。
 時々護られているような気もして、友達というより兄貴か親戚に近い存在だ。
「お前がついてくれてると安心だよ」
 安田は門扉を開け、敷地へ足を踏み入れた。庭は雑草だらけで、腰の高さまで生長したものもある。大掃除にやって来た身としては先が思いやられた。
 安田家に遺産相続の話が飛び込んできたのは、半年ほど前のことだ。祖母のタネが他界し、所有していた財産の一部を父親が継ぐこととなったが、広い屋敷と二束三文にしかならない山林は持て余すだけのものとなった。今の生活に満足し、そのリズムを狂わせたくないという両親のため、親孝行だと思って安田が管理することになっている。

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